株式会社瀬戸内ジャムズガーデン

達人名:松嶋 匡史さん Tadashi Matsushima
    株式会社瀬戸内ジャムズガーデン 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
山口県大島郡周防大島町 Suooshima-machi Oshima-gun Yamaguchi

_68A7873.JPG_68A7873.JPGスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

温暖な気候で柑橘類の栽培が盛んな周防大島
型にはまらない発想で地域を巻き込み、
次々と新事業を展開する人気ジャム屋の挑戦

電力会社員だった2001年に新婚旅行でたまたま訪れたパリのジャム屋で多彩なジャムに魅了され、ジャム専門店を開くことを決意。2003年、妻の郷里・周防大島の道の駅で卸販売を開始し、翌年に夏季限定の直営店をオープン。2007年に脱サラし、通年営業へ。原材料の栽培・加工・販売に取り組み、2011年に組織を法人化。2012年には周防大島町観光協会副会長に就任した。新規就農者の雇用と定住促進、島の1次産業の活性化を目指している。(2016年9月23日 取材・撮影/RPI)

■株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
http://www.jams-garden.com/


インタビュー

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妻の郷里の周防大島で素材にこだわるジャム作り

_68A8079.JPG店舗からは瀬戸内海が眺められる絶好のロケーション。季節のジャムを使ったスイーツやドリンクが楽しめるカフェ。ガーデンテラスでも食事ができる。 ジャム専門店の立地は消費地と生産地のどちらに近い場所がいいか、開業するにあたり、松嶋匡史さんは迷ったという。出身地の京都で町屋を改修しようとも考えたが、結局、妻の智明さんの郷里・周防大島で開業を選んだ。ジャムの味を決める最大の要因は原材料の果実類だ。多種多様な果実類、特に柑橘栽培が盛んなことがこの地を選んだ決め手となった。

 この島が高齢化率日本一と知り、「後継者がいなくて誰も果実を作らなくなったらジャム屋としても地域としても困る。地域全体で持続的な仕組にするには、適正な価格で果実を買い取り、農家に利益が十分に還元される仕組を作らなければ」と、キロ約7~8円で引き取られるジュース加工用みかんを、最低キロ100円で買い取っている。ジャムの価格は大量生産品より格段に高くなるが、農家の所得を向上させ、後継ぎを育ててもらうことが双方にとって前向きな選択だと考えた。

 3年間の夏季限定販売を経て、電力会社を辞め、通年営業を開始した最初の冬は客が少なくて経営的に厳しかった。しかし、サツマイモの東和金時をパンに塗ってから焼く「焼きジャム」を開発し、食べ方提案型の手法をとることで、観光客が激減する冬季の売り上げを確保できた。また、年間4回宅配便でジャムが届く「季節便」を導入し、通年販売の仕組も作った。

農家と協力して商品開発、自社農園でも果実を栽培

_68A7983.JPG松嶋さんが頼りにしている、島の農家の山本弘三さん。 松嶋さんが頼りにしているのが、島の農家の山本弘三さんだ。香り豊かな「早摘み青みかん」、酸味がまろやかな「樹上完熟かぼす」などは、ジャムの加工に最適な時期に収穫できるよう、栽培方法を試行錯誤している。そのため、ジャム専用に栽培した果実はこれに見合った価格で買い取られる。8軒から始まった契約農家は、今では56軒に増えた。

 島にない果実は自分で作る。ジャムは保存食なので、多くは年間を通じて同じ種類が店頭に並ぶものだが、「旬の果実を楽しめたほうがいい」とブルーベリー、あんず、ゆずなどを無農薬か減農薬で自社農園で育てている。2010年からは耕作放棄地も借り受け、面積を増やしている。
 「こうしてこだわり抜いた商品には、ストーリーが与えられます」と松嶋さん。お客様の中には、松嶋さんのジャムが農家の利益につながるというストーリーを知り、「島の農家を応援したい」という思いで買ってくれる方もいるそうだ。

事業者とのつながりが地域に新たな展開を生む

_68A8049.JPG年間160種類のうち20~30種類が店頭に並ぶ。全商品、味見が可能。 2003年に販売した47本のいちじくジャムが松嶋さん夫妻の原点である。通年営業を始めた2007年は生産本数1万5000本。順調に増やしてきたが、10万本で頭打ちとなった。そこで、肉料理用ジャムや、かき氷専用ソースなどの新ジャンルの商品を作るために6次産業化ネットワーク活動交付金(整備事業)を活用し、新工房を2015年に完成。一年で生産本数をさらに13万本まで伸ばした。

 生産数の約6割を直営店での販売としている松嶋さんのジャム。「島のためにも直営店に来てもらいたい。私の店で昼ご飯を出さないのは、島のいろいろなところを巡ってほしいからなんです」
 松嶋さんは、ジャムの販売以外に、地域の事業者に利益が回る仕組作りに取り組んでいる。島の餅屋とはジャム大福を共同開発した。島の人口減少に伴い売り上げが下がる豆腐屋とは、観光客をターゲットに豆腐プリンを誕生させた。島でとれたカタクチイワシのオイルサーディンは、松嶋さんのアイディアで商品化された品だ。また、定年退職で島に戻った人とはブルーベリー栽培チームを結成し、障害者支援施設と農福連携にも取り組んでいる。
 「移住者は、商品開発やサービス、観光的な側面からおもしろい目線で地域のいいところを見つけられます。でも、顔なじみがなく地域の人に伝えにくい。私が移住したときに一番ありがたかったのは、妻のお父さんが住職で、地域と密接につながっている中で活動できたことです。だから、今度は自分が移住者と地域の人の両者をつなげるお手伝いがしたいのです」

地方の中山間地に眠る宝を6次産業が生かす

_68A8122.JPG起業家支援で、島の魅力開発。国産カタクチイワシを化学調味料・着色料・保存料不使用で漬け込んだ一品。30代のUターン者に松嶋さんがアドバイスして商品化。オイルサーディン750円(170g)オイシーフーズ  「あのジャム屋に一生に一度は行きたいなと思ってもらえる会社になりたいんです」と松嶋さん。周囲と連携し、地域で盛り上がり、周防大島全体を回遊型のテーマパーク化していきたいと目を輝かせる。
 「地域資源や人材を活用し、雇用を生んで、地域の人が誇りに思える企業が島にあと2~3社あれば、それが目的でこの島に観光客が大勢来ると思うので、そういう事業者や起業家を支援したいという思いがあります」

 田舎で農業をしたいと憧れ、Iターンで地縁も血縁もない周防大島に移住する若い人も増えているという。松嶋さんの願いは、ジャムズガーデンを目的に島を訪れた人が土地の果実に興味を持って農家を志したり、その移住者を受け入れるために民宿を立ち上げたりと、ジャムズガーデンをハブに経済的循環が生まれることだという。

_68A7913.JPG地元の主婦を中心に従業員数は26人(移住者8人を含む)。松嶋さんとともに働く、瀬戸内ジャムズガーデンのスタッフ。 _68A7858.JPG旬のジャム3種類をたっぷり塗って焼いたジャムトースト。



サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

株式会社瀬戸内ジャムズガーデン

山本柑橘園 園主
山本 弘三 さん(70)

品種改良に次々挑み、60種もの柑橘類を栽培

_68A8015.JPG 生食用に栽培するみかんには、黒点病を防ぐために農薬が散布されていることが多く、間引いた摘果みかんをもったいないからとそのまま加工用に利用するわけにはいきません。かといって、無農薬栽培では見た目が悪くなるので、青果として市場に出せるものを作るのは困難です。だから、松嶋さんのジャムに使う柑橘類は加工用に無農薬・減農薬で作ります。また、青果用と加工用の旬は違うので、青みかんを早摘みするなどの工夫をして、新商品を開発しています。
 松嶋さんには熱意と才能があり、努力もされています。センスもよく、起業したい島の若い人にとって目標となる存在です。

しあわせギフト工房まつもと
松本 純子 さん(46)

おいしさと安全性が鍵。品質重視で商品を厳選

_68A8099.JPG 周防大島の旬の果実で手作りしたジャムの評判を当店のお客さまから聞き、奥さまが夏季限定でオープンされていた頃から、お付き合いが始まりました。
 周防大島の農家の方々を発掘して、地域貢献されているところがすばらしいです。これからも地元の果実にこだわり、安全ないい品を作り続けていただきたい。作る人も売る人も買う人も楽しいのがいちばん。山口県の名産品を扱う地元の店として、がんばる店を応援していきたいと思います。

達人からのメッセージ

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「田舎はもともと、個々の人間の多様性がおもしろい場所だったのに、単一品種を大量に安く作る効率化が農業の命題になってしまうのと同時に、地方の多様性も失われたように思います。でも、インターネットを利用すれば多様な生産者の顔を見ることができ、生産者や商品にまつわるストーリーを発信できる時代です。地方には実は宝の山がいっぱい眠っていて、それを生かせるのが、6次産業化ではないかと思います」

株式会社瀬戸内ジャムズガーデン

001 くりジャム 820円
トーストに塗ってから焼く「焼きジャム」の定番商品。

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002 瀬戸内の早摘み青みかん蜂蜜マーマレード 1,080 円
酸味と香りを生かすため、生食用より早く、熟す前に収穫できる青みかんを特別に栽培。

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003  島の完熟かぼす蜂蜜マーマレード 700円
酸味をやわらげ、香り豊かに仕上がるよう、外皮が真っ黄色になるまでかぼすを樹上完熟。

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*いずれもミネラルたっぷりの種子島「洗双糖」を使用し、糖度40%。155g。

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