アグリストリームきむら農園

達人名:木村 幸司 さん Kouji Kimura
    アグリストリームきむら農園 代表
ジャンル:農業 Agriculture
宮崎県児湯郡川南町 Kawaminami-cho Koyu-Gun Miyazaki

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新潟から宮崎へ移住して、コンサルタントから農家へ転身
新規就農者だからこそ広がった可能性

アグリストリームきむら農園 代表の木村 幸司さん(写真右)は、1954年生まれ、青森県出身。大学を卒業後、建設コンサルタント会社に就職。約30年に渡り、営業、企画部門に勤務したのち、2010年に宮崎県へ移住・就農した。
木村さんから、宮崎への移住、就農を希望していることを聞かされた妻の和子さん(写真左)は、多忙だった木村さんのサラリーマン生活を振り返り、就農したらゆっくりとした働き方をして欲しい、夕食を一緒に食べて欲しい、それから、虫が苦手なので畑には出ないことを条件に承諾。「覚悟」を持って私も移住してきましたと話す。
(2016年9月8日 取材・撮影/RPI)

■アグリストリーム きむら農園〈アグリストリーム工房〉
http://www.kimurafarm-miyazaki.com/


インタビュー

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自然エネルギーを創り出す農業を目指し、宮崎へ移住

ph01.JPG完成間近の「マンゴーコンフィチュール」。製造過程での一番のポイントは、マンゴーの食感を味わってもらえるよう、実を潰してしまわないようにすること。 2015年6月、食品や飲料品の味を世界的に評価する、ベルギーの「iTQi(国際味覚審査機構)」の審査会で、宮崎県のマンゴー農家・木村幸司さんが製造するジャム「マンゴーコンフィチュール」が、世界最高の三つ星を獲得した。木村さんが農業を始めたのは2008年のこと。それまでは、妻の和子さんと新潟県に暮らし、コンサルタント会社で部長職を務めるサラリーマンだった。

 木村さんが農業を意識するようになったのは二度の地震を経験してから。「2004年の新潟県中越地震と2007年の新潟県中越沖地震を経験し、自然エネルギーの必要性を感じました。農作物や残渣物からバイオマス発電に取り組むことで、化石燃料等への依存から脱却を図ることができると私は考えています。そうして、農家が自分たちでエネルギーを作ることができれば、経費を抑え農作物を作ることができ、利益も出てきます。このことを実証していくために農業を始めようと、付加価値の高いマンゴー栽培が盛んな宮崎県への移住を決めました。そして、こだわりのマンゴーを通年で食卓に届けたいと思い、6次産業化の一環で始めたのが、コンフィチュールの製造でした」と木村さん。

地元の人たちに認められるようになるまで言葉でなく行動で示す

ph02.JPGマンゴーハウスは元々ミニトマトを作っていた古くて高さの低いハウスを再利用。低木に剪定し、夏場は天井からスプリンクラーで散水、マンゴーの実ができ始めたら何度も方向を変えて吊り直すなど細やかな配慮を施し、ブランドマンゴーを栽培している。 木村さんは、大阪で開催された宮崎県移住就農説明会に参加するなどして準備を進め、移住後は、宮崎県内の農業法人で研修生として農業を学び始めた。しかし、翌年に口蹄疫が発症し、研修を継続できなくなった。自ら圃場を持ち、農業を再スタートさせようと農地貸与の交渉にあたったが、なかなか応じてくれるところはなかった。ようやく高齢の夫婦が木村さんに1ヘクタールの休耕地を貸与してくれることになり、2010年から木村さんはマンゴーの栽培を始めた。収穫したマンゴーを直売所に持ち込み、無償の試食サービスを2年間、収穫期間中ほぼ毎日行った。商品への強い自信と、熱烈な普及活動は地域の人たちからも認められるようになり、マンゴーの味も評価されるようになった。

 2014年には自社農園のマンゴーを「時の雫」と名付け商標登録。直接販売以外に空港ビルでの販売もスタートした。「美味しい」という口コミは徐々に広がり、ついに全国ネットのテレビでも紹介され、大手百貨店のバイヤー、一般の消費者からさらに注目されることとなった。

農業に必要なのは柔軟な対応力

ph03.JPG木村さん(左)とパティシエの江森さん(中)と大黒園の黒木さん(右)。 木村さんには、マンゴー栽培の師匠と慕う人がいる。「〝このマンゴーは美味しい!〟と思った日向市の大黒園の黒木さんを訪ね、マンゴー栽培について様々なことを教わりました。師匠からは、土が一番重要だと教わったので、ハウスの中の土を日向の果樹用の土に入れ替えました。師匠の教えを素直に受け入れ、行動に移すことも大事だと思います。」木村さんから師匠を請われた大黒園の黒木義克さんは、マンゴー栽培歴20年のベテランだが、年齢は木村さんよりも約20歳下の41歳。「私も木村さんから、農家としての経営の考え方やマンゴーの販売方法、6次産業化などについて、教えてもらうことが多くありました。元コンサルタントなので話が非常にうまく、私のモチベーションが上がりました」と、黒木さん。

 木村さんは黒木さんのアドバイスを柔軟に受け入れることで「経験」の部分を補い、黒木さんは木村さんから「新たな知見」を得ることで、2人は切っても切れない関係を築いた。木村さんと黒木さんは共同で、新法人「Bright Color Fruits 事業協同組合」を2016年7月に設立。世界的に有名なパティシエ江森宏之氏を巻き込み、二人が栽培したマンゴーを使ったジェラート「Délice Mangue(デリスマンゴー)」を完成させ、注目を集めている。

地元農家と連携し、加工商品をシリーズ化

ph04.JPG加工の現場では、木村さんの妻・和子さんが工房長を務め、従業員2名とともにマンゴーコンフィチュールを製造している。  2013年6月、木村さんは六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、同年7月にはアグリストリーム工房を開設。「工房は、少しでも地域貢献ができたらと思い、シャッター街になりつつある町の中心部にあったソフトクリーム屋の店舗を整備して開設しました」と木村さん。加工技術は宮崎県食品開発センターから指導を仰ぎ、妻の和子さんと二人でマンゴーのコンフィチュール(ジャム)作りを始めた。木村さん夫婦は、香料を一切使わず、本物のマンゴーの味を堪能できるコンフィチュール作りにこだわった。現在、加工場では地元農家と連携し、いちじくやブルーベリーなどを原料にしたコンフィチュールを開発し、シリーズ商品として販売。加工場では地元の若い女性を雇用し、商品アイテム数の増加に対応している。

 木村さんはさらに、加工場兼カフェの建設を検討している。新設の加工場ではHACCP認証を目指す。「6次産業化にとってHACCP認証を得ることは、安全・安心な商品であることのアピールができ、世界に打って出るには、とても重要なこと」と木村さん。今後は、当初の夢であった自然エネルギーの創出にも積極的に取り組み、地域農業の6次産業化を牽引する人物として、さらに活躍することだろう。

達人からのメッセージ

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木村さんは新規就農であることについてこう話す。「農業大学の講習を受けたときに、『地球温暖化で気温が上昇すると、害虫も病害も変化していくことから、農業の方法を考え直さなければならない』と言っていました。農業は、年々変化する条件に合わせ、その都度柔軟な対応が必要です。そういう点では、マンゴーの栽培に苦労するのは長年の経験者も新規就農者の私も同じだろうと思いました。先進的なマンゴー農家では、ここ数年の温度変化に対応して、ハウス内冷房で開花期を調整しており、私のハウスにも冷房を取り入れています。就農時にそうした情報を把握・分析して将来設計をきちんと行えたのは、前職のおかげです」。

アグリストリームきむら農園

001 ブランドマンゴー「時の雫」
アグリストリームきむら農園のオリジナルブランドのマンゴー「時の雫」。糖度は17度以上、甘みと酸味があり、実はとろけるようななめらかさを感じることができる。市場価格は1個5千~6千円で、旬は4月下旬〜5月末まで。

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002 マンゴーコンフィチュール
解凍したマンゴーをカットして3kg単位で煮込み製造。大鍋で一度に大量に煮込むとコストを抑えられるが、アグリストリームきむら農園では、小さな鍋でひとつひとつのマンゴーの状態を見ながら作業を進めている。宮崎県産の柑橘「へべす」果汁もコンフィチュールの味を調えるポイント。

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003 「Délice Mangue(デリス マンゴー)」
世界的に有名なパティシエ江森宏之氏が監修・製作したマンゴージェラートの「Délice Mangue(デリス マンゴー)」。原料には、木村さんと黒木さんのマンゴーが使われている。

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