農事組合法人 大沢ファーム

達人名:小川 忠洋さん Tadahiro Ogawa
    農事組合法人 大沢ファーム 代表理事
ジャンル:農業 Agriculture
秋田県横手市 Yokote-City Akita

001_メインDSC_1491.JPG001_メインDSC_1491.JPGスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

農家と観光協会がタッグを組み、
国内外の富裕者層マーケットを開拓

秋田県横手市大沢地区は横手市東部に位置する県内有数のぶどうの産地。横手市のぶどう農家らで設立された農事組合法人 大沢ファームでは、収穫したぶどう(スチューベン)をジュースに加工、横手市観光協会が販売を担当し、地域ぐるみの6次産業化を展開している。1本(720㎖)の大沢葡萄ジュースには、横手市内の大沢地区で栽培した糖度23度以上のスチューベン(約1.3㎏)のみを使用し、水も砂糖も一切加えていない。高価格帯での商品となるが、富裕層をターゲットに香港、台湾、上海と海外に販路を広げ、凱旋するかのように国内市場を開拓していった。こだわりのぶどうジュースと消費者との接点をどこに見出したのか? どのような工夫で消費者に魅力を伝えたのか? 大沢ファーム代表理事の小川忠洋さんと、横手市観光協会マネージャーの小棚木征一さんに話をうかがった。
(2016年7月25日 取材・撮影/RPI)

■農事組合法人 大沢ファーム


インタビュー

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催事で出会ったバイヤーを地元に招き商談会を開催

01ブロック_DSC_1443.JPG一般社団法人 横手市観光協会 マネージャーの小棚木征一(こたなぎせいいち)さん(70)。横手の特産物を使った6次産業化で販路開拓を担当している。 「大沢葡萄ジュースが誕生したきっかけは、香港の高級スーパーの日本人バイヤーの提案でした」と話すのは横手市観光協会の小棚木さん。2004年、横手市は香港のシティ・スーパーで開催された催事「みちのくフェア」に参加したが、持ち込んだ同市の特産品に対する香港の消費者の反応は今ひとつだった。改善策を見出すために、市はシティ・スーパーの幹部を横手市に招き商談会を開催。そこで、県内一の大沢地区のぶどう畑を視察したシティ・スーパーの日本人バイヤーが、「このぶどうを使ったジュースを作って欲しい」と進言し、お手本となる青森の事業者を紹介した。香港のシティ・スーパーでは、「日本一のりんごの里づくり」を目指す青森県の財団法人りんごワーク研究所で製造した高級りんごジュースを販売しており、売り上げも上々。バイヤーは、「日本の安全で安心な食品は、香港の富裕者層に受け入れられている」という香港の消費者の動向と売り上げ実績から、大沢地区で製造したぶどうジュースも売れると確信していた。

 バイヤーからの提案を受け、小棚木さん自身も香港のJETRO(日本貿易振興機構)で香港のジュース市場についてヒアリングを行い、実際に香港のスーパーのジュース売場を視察し、売れ筋のぶどうジュースを試飲。香港ではオレンジジュースに次いでぶどうジュースが人気があることから、横手のぶどう(スチューベン)を使ったこだわりのぶどうジュースを作れば、香港市場で勝機があると感じた。

農家のこだわりを加工品の強みに

02ブロック_.jpg大沢葡萄ジュースに使用されている「スチューベン」。大沢地区では樹上で完熟させてから10月ぐらいに収穫している。 ぶどうジュースの原料を求め、小棚木さんは横手市内大沢地区でぶどうの販路開拓を目指す農家が集まる「大沢ぶどう村」の代表・小川さんに相談した。しかし、小川さんは加工に対し抵抗があった。「我々は、生のぶどうをお客様に食べていただくために、代々ぶどうを育てていました。ジュースにするためにぶどうを作っているわけではないですし、ジュースの原料となる農産物は規格外や二流品というイメージがありました」と小川さん。

 だが、県内一のぶどう産地でありながらスチューベンの知名度は低く、「もっと秋田のぶどうを知ってもらいたい。新たな一歩を踏み出したい」という思いもあった。小川さんは小棚木さんと話し合いを重ね、ジュースの原料としてスチューベンを提供することを決め、6軒のぶどう農家から生果として出荷するものと同じ、糖度23度以上の自慢のスチューベンを3トン取り寄せた。横手市観光協会はこのぶどうを、農家が納得する価格で買い取り、盛岡の加工業者にジュース加工を委託。2005年の秋に完成した2300本のぶどうジュースは完売し、そのうち600本は香港のシティ・スーパーに納品し、2日間で完売したそうだ。

バイヤーからの助言を生かした商品開発

03ブロック.jpg香港のシティ・スーパーでの催事の様子。大きな声で「グレープジュース!」「ノンシュガー!」「グレープオンリー!」と試飲を呼びかける小棚木さん。 成功した要因は、消費者のもっとも近くにいるバイヤーの助言を生かした商品開発と現地でのマーケティング力の高さにあるだろう。「香港の富裕者層は美容・健康に加え、食材への関心も高い。バイヤーも使用する原材料に厳しいです」と販売先の空気を肌で感じた小棚木さんが話す。以降、台湾や上海のシティ・スーパーでも大沢葡萄ジュースは販売されるようになり、日本国内でも富裕者層をターゲットに販路を開拓。生産本数も初年度の3倍近くにまで増えたことから、地元産業として振興していくために、農事組合法人大沢ファームを設立。2013年に六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、廃校となった学校給食センターを利用して加工場を整備。ヒット商品の大沢葡萄ジュースをはじめ、現在は地元の農産物を活用した洋梨ジュース、横手桃ジュースも製造している。加工場の整備後は、小川さんの長男の智洋さんをはじめ、地元の若い農家が中心となって加工に携わるようになり、小棚木さんと共に販売先の試飲会などにも同行している。

消費者の心をつかんだ証は生産者にも届く

04ブロック_DSC_1524.JPG大沢ファーム 統括本部長の小川 智洋 さん(28)。ぶどう栽培と加工の現場との両方に携わり、観光協会の小棚木さんと共に商談会や催事にも出向く。 大沢ファームの代表に就任した小川さんは、生産者としてぶどう栽培と加工場に出荷されるぶどう全体の品質管理に徹しているが、消費者と接点を持つことがあるという。
「時々お客様から『美味しかった』『あんまり美味しくて感激しました』というお電話をいただきます。美味しいものに反応してくれる、どこまでも探してくれる、気に入ったものを末永く使ってくれる。こういった方たちを裏切らないぶどうを作り、ジュースにして届けたいと思います」と話す。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

農事組合法人 大沢ファームと共に6次産業化に取り組む仲間たち

横手市観光協会のみなさん

観光協会が地域の6次産業化をバックアップ

サポーター_DSC_1481.JPG横手市の中心地にある「ふれあいセンターかまくら館」の中にある物産店でも「大沢葡萄ジュース」は人気の商品。 大沢ファームで製造された大沢葡萄ジュースの営業・販売に関しては、小棚木さんを中心とした横手市観光協会のみなさんが担っている。
 香港のシティ・スーパーのバイヤーから、横手市のぶどうを使ったジュースを作るよう提案を受け、小棚木さん自身も香港のJETRO(日本貿易振興機構)で香港のジュース市場についてヒアリングを行い、実際に香港のスーパーのジュース売場を視察し、売れ筋のぶどうジュースを試飲。香港ではオレンジジュースに次いでぶどうジュースが人気があることから、横手のぶどう(スチューベン)を使ったこだわりのぶどうジュースを作れば、香港市場で勝機があると感じたそうだ。
 そこから先は、横手市内のぶどう農家との交渉、加工委託先を決定し、海外・国内ともに富裕者層をターゲットに販路を開拓した。やがて地元で生産から加工、販売まで一貫した6次産業化を展開するため、法人設立から六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の申請までをフォロー。大沢ファームの6次産業化は、まさにぶどう農家と横手市観光協会の強力なタッグによるものだ。

達人からのメッセージ

達人からのメッセージ_DSC_1502.JPG達人からのメッセージ_DSC_1502.JPG農事組合法人 大沢ファーム 代表理事の小川 忠洋 さん(58)(中央)はぶどう農家の四代目。スチューベンをはじめ20種類のぶどうを2.3haのぶどう畑で栽培している。
全部、自分たち(農家)だけで6次産業化を展開していくのは、なかなか難しいと感じています。我々には観光協会さんという仲間がいました。販路開拓の面で非常にお世話になっていますが、そういった、パートナーを見つけることが大事だと思います。そのためにも、いろいろな人たちと知り合いになり、つながっておくことはとても大切です。

農事組合法人 大沢ファーム

001 大沢葡萄ジュース 横手V i N E R Y(ヴァイナリー)※右はプレミアムジュース
スチューベン100%のストレートジュースで、原料となるぶどうは、大沢地区の25軒の農家が生産するスチューベンを使用。生食用として出荷するぶどうよりも収穫を遅らせ、樹上で完熟させてから加工場に持ち込むが、糖度23度以上でなければ生産者に戻される。
右のプレミアムジュースは、収穫後すぐに搾汁率60%で搾り、18Lガロン缶に詰めて一年間冷蔵保存した商品。従来品の冷蔵保存しないものと比較すると、まろやかさが増しコクのある味わいに。

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002 洋梨ジュース ラ・フランス&シルバーベル
大沢葡萄ジュースに続く第2弾の加工商品。横手市内の果樹農家が作ったラ・フランスとシルバーベルを原料にしており大沢葡萄ジュース同様、合成保存料や着色料は一切使っていない。商品化の背景には、2013年の雪害でぶどうの収穫量が落ち込み、大沢葡萄ジュースの生産本数が前年の半分程度にとどまったことがあり、このラ・フランスのジュースはその分を補う役割を果たした。

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003 横手PEACH 完熟・果汁100% 桃JUICE
大沢ファームの加工品、第3弾の商品。ぶどうと同じく、樹上で完熟させた桃を使ってジュースに加工している。

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