農業生産法人 こと京都株式会社

達人名:山田 敏之 Toshiyuki Yamada
     こと京都株式会社 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
京都府京都市  Kyoto-City Kyoto

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ネギで全国制覇を目指す!京都で事が始まり、
6次産業化ビジネスで新たな“こと”を起こす!

1962年、京都の農家の次男として生まれ、32歳で就農。京野菜の九条ねぎに絞り込んだ周年栽培を行い、関東のラーメン店を中心にカットねぎなどの販売を行う6次産業化をスタートさせる。安定した出荷量を確保するために京都府内の生産農家と提携、九条ねぎ生産者グループ「ことねぎ会」を発足。また、「独立支援研修生制度」を用意して新規就農者の促進にも力を注いでいる。2014年1月には、全国のねぎの産地と連携する「こと日本株式会社」を設立。また、鹿児島県と長野県の農業生産法人と共に、統一ブランド「ベジレクト」も展開。京都にとどまらず、全国の生産者との連携で、さらなる6次産業化を推進している。「平成25年度6次産業化優良事例表彰」において農林水産大臣賞を受賞。6次産業化を推進する先駆者として全国各地から講演依頼が殺到する中、さらなる高みを目指すために、2012年に九州大学大学院 生物資源環境科に入学。趣味のトライアスロンからもすっかり遠ざかり、多忙な日々を送っている。
(2014年1月14日 取材・撮影/RPI)

農業生産法人 こと京都株式会社
農業生産法人による産地間提携・共同ブランド「ベジレクト」

インタビュー

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農業はビジネスという考えから設定された、1億円の売上目標

404_large.jpg京都府認定の「京の伝統野菜」の九条ねぎは、葉肉が薄く、特有のぬめりがあって味が濃い。山田さんは、常に栽培方法を研究して、品質向上と作業の効率化を図っている。 大学卒業後、アパレル業界で働いていた山田さんは、28歳の頃から独立したいと考えていた。“何がしたいのか”という具体的なものはなく、時代の流れ的に今後は農業が大事になっていくことだけは感じていたという。「実家は農業をしていて、手伝いをしたことはありましたが、私は素人同然です。そのうち後継者の話が持ち上がり、私の独立心と、これからの時代の流れ、そして実家が農家であること、全部をひっくるめると、自分は農業をするために生まれてきたのではないか、と思えてきました。」と山田さん。勤めていた会社を辞め、32歳で山田さんは就農した。

 農家一年生の山田さんが、まず行ったのが売上目標の設定だ。その額1億円。「数字に根拠はありません。だた、アパレル業界で店を運営していた時は、1店舗で1億円を目標にしていたこともありましたし、農業もビジネスという考えが根底にありました。でも、農業を知っていたら、こんな目標は立てられなかったでしょうね。」と振り返る。就農1年目の売上は400万円と目標に遠く及ばず、父親と二人、どんなに一生懸命働いても、1億円は達成できないと察した。山田さんは生産体制を見直し、父親の反対を押し切って、通年収穫が可能な“九条ねぎ”のみを栽培することにした。


自分で価格を決め、販路を開拓していく
6次産業化を実感した瞬間

197_large.jpg1日約3トンの九条ねぎが収穫され運ばれてくる城南宮工場。「こと京都」が社のスローガンとして掲げている“日本一のあいさつ”が浸透している職場で、機械音に負けないボリュームであいさつをしてくれる。 それまで家業では、キャベツ、大根、水菜なども栽培していたが、“九条ねぎ”に絞り込んだことによって、コストは削減され、作業効率はアップした。売上は1600万円にまで伸びたが、まだ目標には届かない。そんな中、山田さんは、「ネギ屋」と呼ばれる京都特有の産地仲介業者の姿から、“ネギを加工して飲食店に販売をする”というヒントを見つけた。加工とはネギのカットのことで、取引先は主にラーメン店だった。地元業者との競合を避けるため、山田さんは、青ねぎを使っている関東のラーメン店を雑誌でチェック。当時は白ねぎが主流だった関東のラーメン店だったが、豚骨ラーメンのブームにより青ねぎも受け入れられると山田さんは信じた。「京都の九条ねぎ農家がやって来た。しかも生産者が直接販売するから安い。絶対買いますよね。」と話す山田さん。ネライは当たった。

 九条ねぎをカットして販売するという、山田さんの6次産業化が始まった。甘さが凝縮された九条ねぎの人気は高く、“ラーメン屋のねぎ屋さん”というポジションを確立した。しかし、今度は生産が追いつかなくなり、不足分を知り合いの農家に頼み込むことに。その数およそ100軒。これが、後の九条ねぎ生産者グループ「ことねぎ会」の前身となっていく。そして就農から7年、目標にしていた売上1億円を達成した。


失敗しなければ学べなかった、根底となる経営学

414_large.jpg「平成25年度6次産業化優良事例表彰」において農林水産大臣賞を受賞。参加者に九条ねぎをふるまい試食してもらう。 父親と2人だった社員数も、この頃には17名になっており、これを機に山田さんは「有限会社竹田の子守唄」(こと京都の前身)を設立。売上3億円を想定した九条ねぎの加工場を建設した。そして、「九条ねぎを栽培するのに欠かせない鶏糞を自社で作りたかった」と話す山田さんは、日本の原風景が残る山里として知られる美山町(京都府南丹市)に養鶏場を建設。第2の事業をスタートさせた。鶏糞は九条ねぎの肥料となり、九条ねぎの残渣は鶏のエサの一部となる。一石二鳥の循環農法からは、質のいい卵も生まれた。

 勢いに乗った山田さんは、この卵を使ったケーキの製造など、第3の事業も始めた。しかし売上は上がらない。前後して鳥インフルエンザの影響を受け、養鶏部門のマイナスが響き赤字経営に転落してしまう。当時を振り返り山田さんは、「モノを売ること、営業は好きだったけど、私は経営者ではなかったんです。経営者とは、資金を考えて、計画を練って、売上の計画を立てる。ターゲットをどのように絞り込むかなど、あらゆることをしなくてはいけません。」と話す。山田さんは、京都中小企業家同友会が主催する「人を生かす経営」実践道場に入門。必死に経営を学んだ。そして、経営指針書を作成する中で、社名を「農業生産法人こと京都株式会社」に変更。2007年、「こと京都」と山田さんは新しいスタートを切った。


本来の農作物の美味しさを、生産者がどう正しく伝えていくかが、
6次産業化のポイント

213_large.jpgHACCP対応となっている本社工場。カットしたネギを洗った水は1 回ごとに捨て、塩素を使わずオゾン殺菌が施されるなど徹底した衛生管理が行われている。 2008年、中国の冷凍餃子事件が起こり、中国からのネギの輸入がストップ。加えて、食品偽装問題などが起こり、国産品の安心・安全な商品が求められる時代になった。これをチャンスと捉えた山田さんは10億円の売上目標を掲げ、生産体制を強化するために、九条ねぎ生産者グループ「ことねぎ会」を発足させた。これまでの100軒の契約農家との契約内容を見直し、改めて24軒の生産者と契約を結び、「ことねぎ会と契約した農家さんには、JGAP認証の取得に努力していただき、当社の販売計画にも参加していただくなど、当社の経営にとって重要なパートナーとなっていただきました。」と話す。

 しかし、2011年の東日本大震災では、取引先より納入ストップがかかり再び赤字に。2012年には、26年ぶりの厳冬による影響で不作に陥った。赤字を重ね、気丈な山田さんも、この時ばかりは「心が折れそうになった。」と漏らしたそうだ。これを教訓とした山田さんは、天候不順によるリスクを少なくするために、加工品の強化に乗り出した。そして、売上目標の3割を加工品に割り当てた。「加工品も作ればいいというものではなく、美味しくて、売れるものでなければなりません。プロと連携して、味付け、パッケージデザインなど進めました。」と話す山田さん。加えて、「6次産業化のポイントは、本来の農作物の美味しさを、生産者がどう正しく伝えていくか。そこが大事です。」とも話す。


京都から全国へ広がる、ねぎ生産者のネットワーク

405_large.jpg高齢化が進み田畑の維持が心配されている山里の美山町。山田さんは地域活性化の一助になればと、観光農園の建設を考えている。 新しい本社工場を立ち上げ、販路はラーメン店などの飲食店の他に、食品スーパー、百貨店へと拡大。今後の生産量確保のために、山田さんは、新規就農者を育成するシステム「独立支援研修生制度」を用意した。研修終了後は「ことねぎ会」に加入して、農地の紹介など多様な支援を受けられる。また、養鶏の実績が認められ、九条ねぎの栽培が美山町でも始まった。「土地・気候の条件が良く、大変質の高い九条ねぎが収穫できています。今後、美山町では地域活性化に関われるようなことを考えていきたいです。」と、美山町に対する想いを語る。

 2014年1月には、全国のねぎの産地と連携する「こと日本株式会社」を設立。提携した農家のねぎは、こと京都の営業力を使い、単価を確保しながら利益を上げていく。「こと京都」の2013年の売上は7億1千万円。5年後には15億円という目標も掲げている。そして、「こと日本」としては将来的に200億円を目指しているという。一方、海外展開については「まずは日本を固めたい。生産から加工までの仕組みを確立できたら、いつかは、その事業パッケージを、海外に持っていけるかもしれません。」と山田さんは話す。2007年に変更した社名「こと京都」の“こと”には、京都の文化や、商品の背景を伝えていくという意味がある。山田さんがこれから発信していく“こと”は、京都から日本全国に広がっていこうとしている。


サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

こと京都をサポート 1

地元のしがらみを円滑にしてくれた地元の実力者
久御山土地 内田保男さん

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 先代、先々代の時代から山田家との付き合いがあるという内田さん。山田さんが就農してからは、その行く末を見守ってきた人物のひとりと言える。家族で農業をしても1千万円を超えるくらいが売上の限界と察した山田さんが、法人化を考え、「会社として農地を確保したい」と内田さんに相談。なかなか相容れることが難しい地元の人間関係、しがらみの中、内田さんは、巨椋池地域のほ場拡大にあたって生産者や土地を紹介、自身の土地も山田さんに提供したそうだ。

 脱サラをして就農。市場ではトップクラスの高値で取引されるまで農業者として成長した山田さんのことを、内田さんは「たいしたもんだ」と褒める。付け加えて、「農業生産法人なんて、このあたりの農家では聞かない言葉でした。よくここまで会社として育てたと思いますよ。」と目を細める。「山田社長は、ねぎを栽培している土地が痩せないよう、稲作を取り入れ、一度更地にして、ねぎを作るという方法もしているから、頼まれたらまたやらないといけないですね」と話す。77歳を迎え、内田さんは今なお現役の農業者だ。

こと京都をサポート 2

立ち上げから関わる「ことねぎ会」の中心メンバー
井上農園 井上平夫さん

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「山田社長は、やっぱり考え方が違いますね」と話すのは、ことねぎ会の中心メンバーの井上平夫さん。京都で代々農業を営む家に生まれ、学校を卒業してから就農。農業ひと筋で生きてきた井上さん。「私たちは親の財産を引き継いで、どう守っていくかというストーリーになっていきますが、山田社長のように脱サラされた方の場合、今ある土地をいかに有効利用して、所得をあげていくかという考えができますよね。そこは大きな違いを感じました。」と話す。その違いは、地元生産者から反発を受ける面もあるが、井上さんは、「いい九条ねぎを作って適正な価格で売っていく」という山田さんの考えに共感。山田さんの事業に寄り添うようになってきた。

 実は、井上さん自身も、数名の九条ねぎ生産者とグループを作り、いい九条ねぎを自分たちで売っていきたいと考えていた。井上さんは、山田さんが発足させた九条ねぎ生産者グループ「ことねぎ会」の立ち上げメンバーとなり、山田さんと共に、クオリティの高い九条ねぎ作りのための研究にも取り組んでいった。井上さんについて山田さんは、「いろんな考えを持った生産者がいて、話がまとまらなくなると、方向を示してくれる。まさに、『ことねぎ会』の中心メンバーです」と話す。



達人からのメッセージ

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282_large.jpg「6次産業化を目指す方は経営を勉強して欲しい」と話す山田さん。事業展開の途中失敗をして、そこで初めて経営を学んだ山田さんが言う。“農業はビジネス”だと。また、「農業は土地の歴史を伝えていくことができます。そのストーリーはブランド力となっていきます。本来の農作物の美味しさを、生産者がどう正しく伝えていくかが、6次産業化のポイントになってくると思います」と加える。伝えていくことも自身の使命とし、大学で学び、「農業はビジネス」を理論として、山田さんは発信し続けている。

こと京都の商品

001 カットねぎ
すぐに使えるカット九条ねぎ。業務用には、そば・うどん用の2mm幅、ラーメン用の3mm幅、お好み焼き用の5mm幅などがある。九条ねぎは、1300年前から京の都で栽培されてきた伝統野菜。美味しさのヒミツは、普通のねぎに比べ格段に多い“ぬめり”にある。

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002 乾燥九条ねぎ
低温の温風で乾燥させた九条ねぎで、賞味期限は製造より1年。常備しておけば、手軽にさっと京野菜の九条ねぎを食卓で味わえる。6g入りと10g入りがある。

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003 京都九条のねぎ塩ドレッシング
ごま油をベースにした、九条ねぎを使ったドレッシング。サラダはもちろん、肉との相性がよく、焼肉のタレや、豚しゃぶにも使える。九条ねぎのさっぱりとした風味をソース感覚で楽しめる。

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004 京都九条のねぎマヨ
子供に人気の乳化液状のドレッシング。生野菜のドレッシングやディップソースとしての使用はもちろん、粘性があるので、海老フライやチキン南蛮などの揚げ物に、タルタルソース感覚で使用するのもおすすめ。サンドイッチにはさむ卵の具に混ぜてなど、卵料理との相性もいい。

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005 京都九条のねぎ醤油
九条ねぎペーストをもとにした、醤油ベースのドレッシング。カルパッチョやローストビーフ、魚料理におすすめ。

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006 京の九条の葱の油
こと京都と、京都の人気イタリアンレストラン「イル・ギオットーネ」、同じく京都の老舗「山中油店」が共同開発した商品。500品以上のエントリー商品が集まった、2013年「地場もん国民大賞」で審査員賞を受賞。100ml入り、200ml入りがある。
※「地場もん国民大賞」とは、全国各地域にある、「地場もん=地元で広く親しまれている食材、地域の食文化を活かした料理など、食の地域特産品」を広く募集し、国民の投票により「地場もんNo.1」を決定するコンテスト。

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007 京の九条のねぎのグリーンカレー
九条ねぎのペーストからできた、九条ねぎのカレー。九条ねぎの特徴である、しっかりとした葉肉の食感も楽しめる。

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008 京の九条のねぎのポタージュ
九条ねぎのパウダーをもとに、九条ねぎの独特の香り・まろやかな風味、味わいを楽しめるポタージュ。

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